
オンラインライブを50日間紹介し続けて感じた課題と希望
レコチョクでは3/27よりほぼ毎日、オンライン配信されるライブ・音楽イベントをnote上にまとめています。
気づくと開始からすでに2か月弱が経ち、掲載したライブ情報も250本を超えました。(5/17時点で277本)
本記事ではこれまでの振り返りと今思っていることをまとめてみたいと思います。
(恐ろしく長くなってしまったので、目次から気になる部分を選んで読んでいただくことをお勧めします・・・)
なぜはじめたのか
これはもうシンプルに「自分が欲しかった」というのが大きいですね。
ちょうど社内でnote立ち上げの準備・検討をしていたので、「まずは配信ライブをまとめるところからはじめさせて」と自ら手をあげました。
開始当初は予定されていたライブがどうなるか当日までわからない、という混乱した状況で、急遽配信となっても見逃して悔しい思いをすることが度々ありました。
これはユーザーサイドだけでなく、アーティストさんはじめ主催側にとっても大きな機会損失になっていると感じていました。
また、ライブを体験として考えると、ライブ予定を友達とシェアしたり、同じ日に行きたいライブが被って迷うといった事前の楽しみも大きい割合を占めていると思うんですよね。
ライブ予定はeplusさん・freaxさんといった優秀なスケジュール・リマインドアプリがあったのに、配信ライブにはその場がまだなかった。
なので私自身は「調べて友達にLINEで送る」代わりに「調べてnoteに書く」という感覚で続けていますし、記事を見た方は配信ライブ予定をネタに楽しむ、といった体験をしてくれると嬉しいな、と思っています。
今ではdigleさんなど近しいことをもっとスマートにされているサイトも増えてきましたが、はじめたタイミングや情報量ではレコチョクも結構頑張ってるよな~と自分を励ましながら更新しております。
そして、
今はまだそんな余裕は誰にもないですが、何年かして「こんな大量に配信ライブってやってたんだ」とか、「あーこれ見たなあ」と振り返ってもらえるようなアーカイブになっていれば最高だな、なんてことを少し妄想したりもしています。
どうやって調べているのか
あまり特別なことはしておらず
ニュースサイトを巡回してイベントを見つける
↓
出演するアーティストや会場のtwitterを見て、今後も継続的に開催してくれそうな場合はリストに入れる
↓
twitterリストとニュースサイトを巡回してイベント情報を拾いつつ、巡回対象とリストをメンテし続ける
という地味な力技を繰り返しております。所要時間は1時間/日くらいでしょうか。
はい、ワンオペです。
記事は日付単位なので、日ごとの下書きにニュースサイトやtwitterのURLだけを貼っておき、公開のタイミングで整形するという流れが基本です。
(5/16時点で最新の下書きは7/15でした、先は長い…)
イベントはやはり週末に集中するので、現在は
「月曜にその週の日曜分までを公開し、その後も追加変更を随時反映していく」
という更新スケジュールにしています
掲載対象も悩みどころでして、
まとめ記事本文中に『「ライブ演奏の生配信」を優先して収集・掲載します。』
と記載しているのですが、もう少し細かく考えると
テレビ・ラジオ等の放送
…番組表が整備されているし、きりがない。
海外アーティストや海外主催の配信フェス
…時差の考慮などが厳しいし、きりがない。
期間限定公開の録画コンテンツ
…ライブの疑似体験という主旨からやや外れるし、きりがない。
という感じです。
ただし、迷いや例外もあります。
例えばYouTubeのプレミアム公開だと録画コンテンツでも見る側はライブ感あるんですよね。
あとは海外フェスでも出演者に日本人がいると日本時間でニュースが出たりもするので、その場合は掲載することもあります。
この辺りはタイミングよく情報を拾えれば掲載する、くらいのあいまいなルールでやっております。
正直な話としては、出演アーティストへの思い入れや知識量にも影響されてしまいますね。(secret skyには長谷川白紙が出ていたので・・・)
振り返り①:更新開始(3月末)
ここからは、これまでの更新作業を振り返り、
・時期ごとのライブ配信の動向・変遷
・レコチョクnoteでの掲載の工夫
をご紹介していきます。
全てのライブ配信を網羅しているわけではないですが、ある程度の傾向は見ていただける内容になっているのではないかと思います。
冒頭にも書いたように最初の記事は3月27日でした。13本のライブを掲載しています。
ライブ配信動向
2月の頭ごろからライブ会場等での感染リスクが懸念されだし、2月の終わりにはライブが軒並み中止になり始めました。
大きいトピックだと
・perfumeドームライブ初日実施・2日目当日中止:2/25・2/26
・Bad Hop横浜アリーナ無観客ライブ敢行:3/1
・ジャニーズ横浜アリーナ無観客ライブ:3/29~4/1
などがあります。
少し当時の雰囲気を思い出していただけましたでしょうか。
個人的には、まだちょっとしたお祭り気分というか、良くも悪くも非日常的な高揚感のようなものがあったと記憶しています。
レコチョクnote
・情報を小出しにした方が頻繁に来てもらえるのでは?という仮説で毎日更新を謳っていましたが、今振り返ると告知~イベント開始までの時間が短く、あまりいい手ではなかったなと思います。
・「ライブ情報はテキストだけで最小限、最後に一言コメント」というスタイルは、ナタリーの前身である音楽ニュースサイト「ミュージックマシーン」にあこがれてのものです。
(コメントが早々にネタ切れし断念…)
振り返り②:試行錯誤期(3月末~4月初旬)
ライブ配信動向
この時期はもともと決まっていたライブが急遽配信ライブに切り替えられるといった形式が多かったように思います。
一方で代官山UNITのように初めから配信のみを前提としたイベントとクラウドファンディングの組み合わせなどもスタートし、まさに試行錯誤の時期でした。
※気づけば達成率90%超えてる!!
レコチョクnote
noteの方からいろいろアドバイスをいただき、目次を導入したりアーティストさんの告知tweetを埋め込んだり、こちらも試行錯誤の時期でした。
振り返り③:緊急事態宣言(4/8前後)
ライブ配信動向
4/8に緊急事態宣言が出されますが、それより前から無観客配信すら「3密」にあたるのでは?という懸念が出始めました。この懸念からライブハウスの営業自粛が加速し、それに伴い配信予定が中止となるケースも目立ってきました。配信ライブを積極にされていた新代田feverの営業自粛などは大きなインパクトがありました。
【カオスの百年〜YouTube Super Chat〜】
— 9mmParabellumBullet (@9mm_official) March 30, 2020
4/1(水)に予定しておりましたYouTube生配信ですが、ご協力頂いていた新代田FEVERの営業自粛に伴い、残念ながら中止となります。
かわりに、9mmから4/1(水)19:00よりオフィシャルYouTubeチャンネルにて、未発表ライブ映像解禁!https://t.co/9TEUzd3Mx2 pic.twitter.com/ygB0EXsGwM
配信をして、クラファンをして、それでも運営継続できるかは怪しい、という状況で、配信すら封じられてしまう。特にライブハウス周りでは一層絶望的な雰囲気に支配された時期だったように思います。実際にここからGWまではご紹介するライブ数も少なめになってしまいました。
そんな中でも、小岩BUSHUBASH・四谷outbreak・荻窪velvetsun・青山月見ル君思フといったライブハウスは様々な対策・工夫の上で積極的にライブ配信を実施しており、更新を続ける大きな励みになってくれました。
現在ご協力頂いているBUSHBASHへのドネーション/販売です。もし気が向いた方おりましたらお願い致します。
— BUSHBASH (@KOIWA_BUSHBASH) May 14, 2020
PAYPALhttps://t.co/NA0O8YF5K9
WEBSHOP(donation/drink ticket/CD)https://t.co/xVLy0dwuVA
DIGITAL RELEASE by TIALAhttps://t.co/OyWBke1RAP pic.twitter.com/HlPIgpM1Xx
【定期】アウトブレイクではレコーディングもできます!深夜・午前・月1回丸一日をレコーディングスタジオとして開放中!!毎月15組以上をレコーディングしています。全国流通・有料/無料配信も出来るのでご相談下さい!ライブハウスは便利なんだぜ!
— 佐藤"boone"学@四谷アウトブレイク店長 (@boone4649) May 13, 2020
5/30 20:00よりROTH BART BARON、生配信単独ライブが青山「月見ル君想フ」にて開催決定⚡️
— 月見ル君想フ (@moonromantic) May 15, 2020
延期となった「けものたちの名前」Tour Final と同じ日に7人編成でのスペシャルな単独ライブを行います!!
こちらからチェック👇https://t.co/rkMJpMZP8G pic.twitter.com/BBgP7WxcVd
振り返り④:多様化-フェス・クラブ・アイドル-(4月半ば~)
ライブ配信動向
ライブの代替としての配信が難しくなる一方で、4月の頭からなかばにかけて自宅からのDJ配信やオケでのアイドルライブなど、(バンド演奏に比較して)少人数で実行可能なイベントの配信が増え始めます。
また、春フェスシーズン到来に伴い、フェスをオンライン上に置き換える、という試みも目立ってきました。さらに坂本冬美さんなど、平時であればそこまで積極的にオンラインに露出されない大御所のイベントなども催され、配信イベントがライブの代替から、新しい表現・メディアとして捉え直され始めた時期と見ることができると思います。
【やんよ。】
— nuance_official (@nuance_official) March 31, 2020
ヌュマが果たして電波に乗るのか🌊
全てがテストケースでどうなるか全くわかりませんが🙄
やるだけやってみます❗️(←)
4月5日(日)15:00ごろから youtubeにて
online物販(まぁ、ネットサイン会だよね)も。
ま、やってみよ。
*会場観覧はできません。#ヌュアンス #ヌュ #nuance pic.twitter.com/UUqZBtaPOY
【お知らせ】
— D-YAMA / ちょろやま (@choroyama) April 1, 2020
コロナでMOGRAが自粛休業中になにかできることはないかと考え、各クラブやライブハウス、団体、企業、その他大勢の人を巻き込んでクラブ・ライブハウス主体による新しいライブストリーミングの企画をスタートします。https://t.co/t3mvNm2ZOV #MU2020 pic.twitter.com/7OKo8BOJg8
配信での開催となりました、今年の #Rainbowdiscoclub
— YUTA SHIMIZU (@YUTA_SMZ) May 12, 2020
その制作過程から、配信当日、その後に至るまでが、EVELAさんで記事になりました。ありがとうございます!
前編は、配信前日に公開されましたが、丁寧な取材を経て後編が公開されました。https://t.co/9h6hhXsuwW
レコチョクnote
・TOP画に「みんなのフォトギャラリー」の画像を使い始めました。選ぶ過程が楽しく、使用した画像の提供者の方が記事に言及してくれるのも嬉しかったです。
・星野源さんの「うちで踊ろう」を筆頭に、「ライブ配信」には括れない音楽コンテンツが話題になり、掲載対象を見直すべきかなど迷った時期でした。(結局大きな見直しはせず)
振り返り⑤:レギュラー化・日常化(5月以降)
ライブ配信動向
GWになると配信イベントが激増しました。具体的には4月には平日2、3・週末5前後だったものが平日5前後・週末2桁と、ほぼ倍増しています。
当初は「連休特需か」と思っていたのですが、連休終えて5/17時点でもこの水準をキープしています。
これはライブビジネスに関わる方達が、ライブ配信を(ライブの代替や一時凌ぎではなく)活動・収入の柱として見始めたことを示していると思います。
実際に配信ライブがシリーズ化されたり、サブスクリプションチケット型のイベントなども出始めました。
こちらのTwitterアカウントは「CAVE TOUR 2020」の開催中止に伴いまして、CAVE運営チームが発信するライブ配信プログラム「HOMEWORK PROGRAM」アカウントへと変更になりました。
— 『HOMEWORK PROGRAM』 (@HW_PROGRAM_CAVE) April 12, 2020
配信ですが様々なアーティストの皆様が今後出演予定なので、引き続き情報をチェックしてみて下さい。
CAVETOUR運営一同
ライブ配信の定着や多様化という観点では喜ばしいことかもしれませんが、ライブビジネス・音楽ビジネス全体で見たときにこれがポジティブな傾向なのかは正直まだ答えが出せていないです(この後でもう少し詳しく述べる予定です。)
レコチョクnote
・5月からpro化しました。アナリティクスを眺めるのが楽しいです。
・SNSシェア時のわかりやすさを考慮し、記事タイトルにイベント名を入れるようにしました。
配信ライブは『まだ』生のライブの代わりにはなり得ない
ここからは2ヶ月の更新作業とその振り返りを経て、また1音楽ファンとして思うところを書き残しておきたいと思います。あくまでも現時点での、また1個人の意見であることを強調させてください。
現状のライブ配信は「今まで行ったライブの思い出」や「正常化した後にいくライブへの期待感」を前提にすることで、もっといえばそこに依存することで、辛うじて成立しているものがほとんどです。
実際のライブは行くまでのワクワクや会場のざわめき、終わった後の友達との飲みの楽しさまでパッケージされた総合体験であるのに対し、現状の配信ライブはそのうちの極一部である音と映像だけを、しかも極めて限定された形で届けるのが精一杯だからです。「思い出補正」でブーストできない人にとっては、実際のライブよりも数段劣るコンテンツと言わざるを得ません。
ここで唐突に演劇の話になりますが、「12人の優しい日本人を読む会」に出演された相島一之さんが『演劇の舞台をカニだとしたら、所詮カニカマだけど、本物のカニの魅力をみんなが忘れないために、少しでもそれを伝えられたらいい』といったコメントをされていました。
「12人の優しい日本人を読む会」はそこらのカニを遥かに凌駕する極上のカニカマでしたが、それでもやはり「極上の加工品」であって、極上の加工品よりも川でとったサワガニをそのまま食べた方がずっと良い、というのがライブ芸術を好む人の基本的な嗜好だと思います。(伝わりますか、この例え?)
ですので、自分はライブ配信を見るたびに「はやくライブハウスで生のライブが見たい」気持ちが、時に苦痛と言えるレベルで沸き起こります。過去のライブの思い出や未来のライブへの期待があるうちは、これはライブへの訴求になるかもしれません。しかしそれらが薄れ、消え去った時には、シンプルなライブ配信への不満として残るでしょう。
あるいは元から過去のライブの思い出や未来のライブへの期待を持ち得ない人の目に、ライブ配信はどう映るでしょうか?
もっと生臭い話として、ライブ配信を継続したとして、通常のライブをやるのと同等の売り上げ/利益を長期間継続していけるのか、という懸念もあります。
音源がCDからデジタルに移行し、音楽ビジネスの主戦場は体験/ライブに移行しました。大きなシフトの真っ只中にその行先を閉ざすような悲劇が起こってしまったわけです。着うたで成長したレコチョクも紛れもない当事者の一人として、この課題に向き合う必要があると考えています。
未来の配信ライブへの希望
ただ、上記は全て「今のところ」の話です。今まさに日々積み重ねられているライブ配信の経験やノウハウが、そのコンテンツ力を向上させ、生のライブとはまた違った魅力を纏わせることは十分に期待できると思っています。
例えば、こういった情報が見る側にまで無料で共有されることは、以前ならあり得ない画期的な出来事と言えるでしょう。こうして提供者の技術と見る側のリテラシーが同時に向上すれば、ライブ配信の質は加速度的に向上していくでしょう。
あるいは、今後少しずつ生鑑賞が解禁されて行った時、ライブと配信が融合することで、新しい体験が生まれることにも期待したいです。
元たま・現パスカルズの石川さんの前向きで優しいtweetが印象的でした。
先日、ソロで無観客有料配信ライブをやった。狭い会場だったので通常キャパは限度25名。しかし配信では140名の有料閲覧があった。今後通常のライブが出来るようになっても配信と二刀流がいいと思った。地方や海外の方や子供の世話や親の介護などでなかなか直接来られない方の存在を改めて知ったから。
— 石川浩司 (@ishikawakoji) May 28, 2020
最後に
書き始めの予想を遥かに超える超長文となってしまいました。少しでも読んでいただけた方、ありがとうございます(もし全部読んでいただけた方がいらっしゃれば、お友達になってください)
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ライブ配信に限らず、変わりゆく音楽業界の中で我々レコチョクも新しい挑戦をしていきます。このnoteではその模様もお見せしていきたいと思うので、よろしければ是非本アカウントのフォローをお願い致します。